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2010/08/14 7:19 に ついついペコ が投稿   [ 2010/08/14 7:31 に更新しました ]
 
 
俊はそれを紙袋からゆっくり取り出した。取り出した雑誌の表紙には「人気の仔犬ベスト100」と書かれた可愛らしいものだった。

「……なに…これ……」

「青少年のバイブルだ。仔犬のあんな姿や、こんな姿が盛り沢山なんだぞ!?」

「いや、確かに可愛いけど…」

落胆する俊の姿を横目に、俺はふと窓から見える外の景色に目を移した。

外を歩く多くの人の姿は、涼んだ病室からただ眺めている俺でさえ、外の蒸し暑さを感じさせた。そんな中、たくさんの人がいる中で、俺の目が止まってしまう医師がいた。
相当暑いはずなのに、表情を崩すことが無く、凛とした背筋に黒く長い髪。そして白衣をまとった彼女は、まさに誰もが想像する「医者」と言う言葉のイメージそのものの姿をしていた。それでいて、患者に向けられている笑顔を見ると、女性の温かさを感じられずにはいられず、不覚にも俺は、彼女から目を離すことができなくなっていた。まるで時が止まったかのように。

「……うや…りょう……」

 何か声が聞こえる。しかしまだ、時を動かしたくないと全身が訴えっていた。少しずつ音が消えてゆく。また
彼女に焦点が定まってゆく。

「おい!涼夜」

 左から聞こえる大きな声。そして左肩から伝わる衝撃が、止まった全身の時間を一瞬にして動かした。
 
 
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