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2010/08/13 6:56 に ついついペコ が投稿   [ 2010/08/13 9:28 に更新しました ]
 
 夏陰を求めながら歩くこのコンクリートに囲まれた世界で、僕ら人間は幾度、蜃気楼を目撃してきたのだろう。
今日もまた逃げ水という名の蜃気楼が出現した。
 
 
 
 夏の病院というのは、冷房が効いていて、快適なものだと見舞いに来て初めて気が付いた。19年間生きてきて、入院を一度してみたいと不謹慎にも思ってしまった。
 エレベーターで3階に行くと、いつもの見慣れた待合室なんてものは無く、ナースステイションを中心に、隔離された部屋が左右に広がっていた。一つ一つネームプレイトを確認しながら部屋を探す。
「俊の苗字ってなんだったけ」
 隣を歩いていた剛がおもむろに口を開いた。
「…剛。それはさすがに酷いと想うぞ…」
「だから、聞いてんだろ」

「…勝山…じゃなかったか…」

 曖昧な記憶を頼りに、俺は確認しながら口にだした。
「おぉ。そうだ。勝山だ。さすが頼りになるぜ、涼夜は」
 剛が俺の背中を、勢いよく叩いたおかげで一歩余分に脚が出る。
「いっ。だから叩くなって」

「まあまあ。さて勝山俊君はどこで寝てるのかな」

 剛は背中をさすっている俺を尻目に、早々と病室を見つけ、ドアをこれまた勢いよく開け放った。
 
 
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