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2010/12/29 23:53 に ついついペコ が投稿
 
 

「無い…なぁ…」

 辺りを見渡しても、あるのは大きな緑の葉を付けた木が一本あるだけだった。俺はもう一度、掌の上に在るはずのモノを確認する。

「…あ、あれ……?」

 掌にあったのは緑の葉が一枚。

「暑さで、やられたのかな…」

 何気無く葉をポケットに入れると、俺は木の根本に座り込んだ。木陰に入ると熱風と感じていた風が涼風に変わり、木漏れ日が静かに揺れる。それは俺をいつになく穏やかな気持ちにさせた。

目を閉じると、甘い桜の香りが鼻を掠める。何か大切なことを忘れているような気がした。頭に浮かんできたのは、あの内容の思い出せない夢のこと。そして、名も知らないあの病院の彼女。それは打ち消そうとしても、消えることはなかった。

 考えても答えの出せないものは、時間を無情にも過ぎさせていくだけだった。

 

 

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